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SPIC Salon Medical Clinic 総院長 柳澤厚生先生

SPIC Salon Medical Clinic 総院長 柳澤厚生先生

既成概念を乗り越えた、自由な存在であり続ける。

区別
  • 教授
  • 開業医
地域
神奈川
科目
内科、キレーション療法専門医

点滴療法研究会会長であり、高濃度ビタミンC点滴療法、キレーション療法、マイヤーズ・カクテル、グルタチオン療法などを先駆的に日本に導入されていることでも知られる柳澤厚生先生。進むはずのレールを外れて思いがけず医療の道に入り、以来現在まで「患者さんのために」という思いで走り続けてこられました。その熱い気持ちは今、次の世代に向けた「ニューエイジ・メディスン(新しい時代の医療)を」というメッセージにも込められています。

「自分の名前」で仕事ができる環境を手に入れる。

丹後当初、先生は医療の道に進むつもりではなかったそうですね。

柳澤厚生先生(以下、柳澤)ええ。実は高校3年の時、某大学の理工学部の推薦をもらっていたんです。ところがたまたま父が杏林大学に医学部が新設されるということを聞きつけてきたようで「うちの家族には医者がいないから、一人ぐらい医者がいたら病気になったときに心強い。お前は医学部に進んだらどうだ」と勧めてくれました。私もそれを聞いて“確かにそうだな、医学部というのはどんなところだろう”と、軽い気持ちで入ることにしたんです。

(写真)柳澤厚生先生
(写真)柳澤厚生先生

丹後そんなに急な進路変更だったのですか。人生というのは、わからないものですね。

柳澤新設ということで、その年だけ杏林大学への願書提出は高校の卒業式の後でもよかったんですよ。それで若干時間的な余裕ができたので、そこで必死で勉強しました。一方で某大学にはそのまま入学して、4月に入ってから杏林大学の入試を受けて合格したんです。当然、某大学には行かなくなりましたから、そちらは自然にフェードアウトとなりました。

丹後卒業後は杏林大学の内科に入局されました。

柳澤成人病をやろうと考えて内科に入ったのですが、そのタイミングで内科が4つに分かれることになり、私は成人病・循環器・血液内科に所属しました。そこで心臓の研究などを始めたんですが、経験を積むにつれて“このままでは面白くないな”という不満も募ってきました。

丹後とおっしゃいますと。

柳澤自分のアイデアでいくら研究論文を発表しても、所属のボスである「××教授の仕事だね」という目でしか評価されなかったんですよ。このままではいくら論文を書いても同じ分野の教授を超えることは永久にできない、と思いました。それでボスの教授がやったことのない領域で成果を上げなくてはダメだと思うようになり、米国に留学することに決めたんです。

丹後そこで米国のジェファーソン大学に留学されたんですね。

柳澤ええ、生理学教室に入って2年間学ぶことができました。その間、英語の論文を16本書いたのですが、それは教授が「ここでできるだけ多くの論文を書いて、日本に帰ったら自分の名前で仕事ができるような存在になりなさい」と指導してくれたおかげでした。当時、日本人の留学生などは手足代わりに使われるのが関の山という時代でしたので、いい教授に巡り会えて非常にラッキーだったと思います。その言葉通り、日本に帰国してからは自分の名前で仕事する機会が持てるようになりました。その後、母校の保健学部救急救命学科の教授を拝命したのですが、元々あまり教授というものになりたいという強い情熱もなかったので、部下もいないこのポジションは非常に気楽でよかったですよ。

自分がいいと思った新しい治療法は
ためらわず人にも勧める。

丹後先生はこれまで非常に広い領域で活躍してこられましたね。例えばメディカル・コミュニケーションもその一つです。

柳澤救急救命学科で救急救命士の育成に取り組んでいたときに感じたのが、コミュニケーションスキルの重要性でした。そこで日本で初めて大学院でコーチングを講義するなど、メディカル・コーチングの普及に取り組みました。今でこそコーチングという言葉はビジネスでもなじみ深いものになっていますが、当時はあまり一般的ではなかったですね。その結果、日本コーチ協会の初代会長も務めることになりました。

丹後そうした幅広い活動の原動力とは何でしょうか。

柳澤成長したいという欲求でしょうね。これまで私は130本ほどの論文を書き、英文での論文も相当数あります。アメリカ心臓病学会から専門医としての認定も受けました。ただ、長く一つのことに取り組んでいると覚えること、吸収することは段々少なくなっていって、成長の余地もなくなってきます。ならば成長するにはどうしたらいいかというと、それまでの自分をリセットして、新しいことを始めるのがいいんです。この“リセットする”、“自分をゼロにする”という感覚はとても大切だと思います

丹後代替医療に取り組まれるようになったのも、同じような思いからでしょうか。

柳澤そうですね。助教授時代のことですが、心臓病の患者さん20人ほどを集めて、ライフスタイルを総合的に改善して経過を見ることをやってみました。するとコレステロールが低下するなど明らかにいい結果が得られ、代替治療、統合治療に関心を持つようになったのです。キレーション療法についても、同様です。あるとき、友人から「父親が狭心症だ」と聞かされて、私は心臓の専門医ですから「その症状なら入院しなくちゃダメだよ」とアドバイスしたのです。ところが3ヵ月後にたまたまご本人にパーティーで会ったらとても元気にされていたので「手術を受けられたんですか」と聞いたら「キレーション療法を受けました。今ではゴルフも大丈夫です」と。

丹後それは驚きですね。

柳澤びっくりしましたよ。それで自分でもキレーション療法を研究するようになりました。現在、キレーション療法については米国の国立衛生研究所代替医療部門が中心となって研究を進めており、狭心症、心筋梗塞、動脈硬化症などの治療法として欧米では人気があります。

丹後既成の概念に縛られてはいけないと。

柳澤いろんな新しい治療法が生まれていますから。

丹後超高濃度ビタミンC点滴療法の普及にも力を入れていらっしゃいますね。

柳澤これは、日本に暮らすアメリカ人から「相談がある」という英語のメールを受け取ったことがきっかけでした。そのアメリカ人が来院されたのでお話を伺ったのですが、その方は悪性リンパ腫にかかっており、私に「ビタミンCを50グラム打って欲しい」とおっしゃったんです。5グラムやそこらならともかく、50グラムなんてとんでもない「あなたが死んだら困る」とお断りしたんですが、彼は「自分の兄は米国の自然療法医で、ビタミンCの治療をするようにアドバイスがあった」と言うんです。では、とりあえず調べてみるから、今日は検査だけで帰ってくれということにしました。

丹後それで調べてみたと。

柳澤早速海外の知り合いの研究者3人にメールで問い合わせてみました。すると3人とも異口同音に「悪性リンパ腫にビタミンCの点滴は効果があるからこういうふうにやったらいい」と返信してきたんです。おっ、自分が知らないだけで、みんなこの治療法は知っていたのか、と驚きました。それで私も超高濃度ビタミンC点滴療法を始めることにしたんです。

柳澤先生が監修しているサプリメント
柳澤先生が監修しているサプリメント

丹後知らないことであっても有効だとわかったら抵抗なく取り入れられるわけですね。その姿勢が素晴らしいと思います。

柳澤私は、自分が“これはいい!”と思ったら、きっとみんなも自分と同じように素晴らしいと思うに違いないから、他の人にも伝えてあげたいって考えるんです。もし私に他の人と違うところがあるとするなら、こういう考え方かもしれませんね。

丹後やはり患者さんのために、という思いがその考え方につながるのでしょうね。

柳澤私が超高濃度ビタミンC点滴療法についてお伝えしたドクターは、2000人はいると思います。その中で700人ほどが点滴療法研究会のメンバーになってくださいました。新しい治療法というのは、どうしても批判されやすいし、攻撃の対象になりやすいものです。その点、こういう形で研究会ができて人数が増えれば、発信力も高まるし、攻撃もされにくくなる。それは結局、治療を受ける患者さんのためにもなるんです

患者さんに寄り添い、
期待を超える医療を提供して欲しい。

丹後先生は大学も定年前に辞められたそうですね。

柳澤定年を7年残して辞めました。教授会は大騒ぎでしたが。私には他にやりたいことがたくさんありましたし、定年がゴールという気持ちなんてまったくなかったですから。

丹後これから医療の世界を目指す学生さんや、若い研修医の皆さんにメッセージをお願いします。

柳澤我々医者は、国民から医師免許を付託された存在です。医療の中心にいるのは、あくまで患者さんです。大切なのはプロトコルを守ることではなくて、“患者さんという人間を見る”ことなんです。日本の医療保険制度が大変素晴らしい制度であることは間違いないのですが、しかし、その運用だけですべての患者さんをカバーできるわけではありません。超高濃度ビタミンC点滴療法を望む患者さんがいても、今の医療保険の枠組みでは認められません。しかし、患者さんのために必要ならば、医者はその枠組みを乗り越えていかなくてはならないと思います。

丹後医療保険の束縛からフリーでなければならないと。

柳澤医療保険の束縛、もっと言えば国の束縛から逃れ、患者さんのために最善の医療を自由に提供する存在でありたいと思います。それを私は「ニューエイジ・メディスン」と呼んでいます。患者さんに寄り添い、患者さんの期待を超える医療を提供することこそ、これからの若い世代に期待したいと思います。

このインタビューのまとめ

  • ・自分の名前で仕事ができる環境を手に入れる
  • ・新しいことに挑戦するから成長できる
  • ・自分をリセットする感覚を持つ
  • ・既成概念にとらわれず、新しいことを受け入れる
  • ・患者さんの期待を超える医療を提供して欲しい

柳澤 厚生 プロフィール
点滴療法研究会 会長
SPIC Salon Medical Clinic総院長
1976年 杏林大学医学部卒
1980年 杏林大学大学院修了 医学博士
1985年 米国ジェファーソン医科大学リサーチフェロー
1995年 杏林大学医学部内科助教授
2000年 杏林大学保健学部救急救命学科教授
2008年 国際統合医療教育センター所長
2009年 第10回国際統合医学会会頭
2011年 国際オーソモレキュラー医学会殿堂入り(カナダ)
2012年 国際オーソモレキュラー医学会会長(カナダ)
2014年 アントワーヌ・ベシャン賞(フランス) パールメーカー賞(アメリカ)
2015年 事業構想大学院大学研究所客員教授
2016年 世界神経療法会議最優秀アカデミー会員(エクアドル)
国際オーソモレキュラー医学会第47回世界大会(2018年 東京開催)会長
米国先端治療会議認定キレーション療法専門医(CCT)
アメリカ心臓病学会特別正会員(FACC)
米国オゾン療法学会会員

<著書>
「ビタミンCががん細胞を殺す」(角川SSC)
「超高濃度ビタミンC点滴療法ハンドブック」(角川SSC)
「グルタチオン点滴でパーキンソン病を治す」(GB)
「つらくないがん治療」(GB)など多数

柳澤厚生先生の主な活動のご案内

Web
  • 本原稿にある所属先、役職等の記載は2017年4月17日現在のものです
  • ご案内した活動の詳細はそれぞれ公式サイトにてご確認ください
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取材日:2017.04.17

責任編集:三谷 恭平/ライター:丹後 雅彦/撮影:岩城 文雄

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